合氣道真生会川崎高津道場 活動報告

2026.02.14

カナダとアメリカからのお客様 2026年2月

2026年2月1日(日)の稽古に、カナダ東部のトロントにある合氣道修行道場より、あゆみ指導員(真生会二段)がご参加くださいました。

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あゆみ指導員は合氣道歴20年以上のベテランであり、合氣道修行道場のガブリエル=ディ=マルコ道場長(五段)の奥様でもあります。川崎髙津道場にはこの数年の間にもう10回近くいらしていただいていて、とてもありがたいことです。合氣道修行道場は、元は合気会所属の道場でしたが、より求める合氣道を探求したいということで、2024年の秋に以前から交流のあった合氣道真生会に、門人一同そろって移籍した異色の道場でもあります。

この日は全体の稽古を始める前に、少しだけ自分とあゆみさんの二人で剣対剣の形の動きを練習し、それから通常の流れで礼拝、体操、体さばき、呼吸力の練習と稽古を進めました。現在の川崎高津道場はこの半年以内くらいに入門したばかりで体さばきにもまだ慣れていない方が数名いて、お客様のあゆみ指導員にお手数をかけてしまい、大変申し訳ないことでした。その後の技の稽古では砂泊先生のご指導を思い出しながら、片手取り、肩取り、突き技などで触れる瞬間に自身の力を抜き、相手を浮かせて捉える呼吸力を主体とした技を練習しました。

稽古中にも話しましたが、呼吸力のプロセスは、相手の意見をよく聞いてその状況や状態を十分に理解し、こちらの要望とのバランスを取って、お互いに納得のいく最適解を導き出す商談や交渉に似ているような気もします。一方的に自分の意見を押し通しても、ただ自分を犠牲にして全てを相手に譲ってしまっても、本当によい結果にはなりません。そこで、かつての近江商人(近江(おうみ)は現在の滋賀県)が商業理念にしたとされる「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という「三方よし」という考え方が参考になるように思います。これを武道に当てはめるなら、自分が傷つかず、相手も傷つけず、周囲の社会にプラスとなる、といったようなことでしょうか。

呼吸力を行う際には、まず自分が体の力をすっかり抜くことが大前提となりますが、これは相手の状態を感じ取り易くなるためでもあります。力を込めてがむしゃらに相手に対抗しようとしたり、「自分の方が強いぞ!」といった気持ちで、どっしりと腰を落としてふんばったりする姿勢は、いうなれば自分の意見ばかり大声で叫んで全く相手の言葉を聞いていないのと同じような状態ではないかと思います。それではたとえ一時的に相手を屈服させることができたとしても、恨みやわだかまりを残し、後により悪い結果を招いてしまうことになるかもしれません。歴史を通して現在の世界情勢を見ていると、そうしたプロセスを経て国家間、民族間、あるいは国家と国民の関係が悪化し、終わりの見えない戦争や内戦を続けているケースが少なくないように思われます。

稽古ではその他に体の大きい人や(なにせカナダ道場には身長2mに達する方もいるそうなので)、イレギュラーな取り方をしてくる方への対応方法についても少し練習しました。体の大きい方への対応方法について、たまに高津道場の稽古の中でも「この技は背の低い人はできませんね」という方がいますが、合氣道は身長150cm少々で明治生まれの男性の中でも小さい方であった植芝盛平翁先生が生み出された武道ですから、背が低いことはデメリットになりません。そのままでは押さえたいところに手が届かなくても、呼吸力で相手の体勢を崩して姿勢を低くさせればよいのですし、呼吸技なら触れているところがどこであれ、そこから相手を捉えてしまえばよいのです。例えばこの日も、突きに対して自分の肩を相手の肩に当てて後方に体勢を崩させる技を稽古しましたが(稽古画像の5枚目)、相手の背が高く腕のどこかまでしか自分の肩が当てられなければ、そこで相手を捉えればよいのです。こと呼吸技に関しては、この形でなければダメ、ここを捉えなければダメ、という制約はありません。

イレギュラーな取り方に関して言えば、自分(吉見)は相手がどんな取り方をしようとまずはそのまま行うようにしています。始めから「その取り方じゃダメです」などと言えば、自分たちの呼吸力が決まった形でしかできないような小手先の理法と勘違いされてしまうかもしれませんから。そして行った上で、あまりになんでもありだと特に慣れていない方たちは稽古がしにくいので、「この練習はこういう想定なので、このように取るようにしています」と丁寧に伝えて直してもらうようにしています。例えばテニスや卓球でフォアハンド(右効きの人なら右側)打ちの練習をするのに、いきなりバックハンド側にボールを送られて「そういう時はフットワークを使って回り込んで打て!」と言われても、まだ経験の浅い人ではなかなか難しいだろうと思います。慣れてくれば、ある程度イレギュラーな取り方をされてもそれなりに対応できるようになっていきます。

ところで、いま川崎高津道場の仲間は自分以外はなせか皆さん女性です。そこで、力の弱い女性や子供との稽古は物足りない、と思っている方も少なくないかもしれませんが、自分はそうは思っていません。力の強い人がしっかりと手を取ってくれていれば、力任せに動いても相手の手は中々外れないので、こちらが力で上回れば形の上ではできたように見せられます。しかし、力の弱い相手の手はすぐ外れてしまうので、そのわずかな接触を大事に捉えて技を行う練習は、呼吸力を習得する上で非常に有効ではないかと思います。女性や子どもと稽古をする時、すぐに手が外れてしまうのを、「相手がよくないのだから仕方ない」と切り捨ててしまうのは、大変に残念な姿勢であると思います。そして、例え力がなくとも、体が小さくても、合氣道はそんなこととは無関係に、全ての人が己の心身を修養し、それぞれの能力を発揮できる武道でなければならないと思っています。

例によって予定の時間をだいぶオーバーし、バタバタと片付けて川崎高津道場の二代目公式イベント会場となりつつある高津駅前の居酒屋「サンマイメ」に席を移し、懇親会を開催しました。そしてこの懇親会には、自分のかつての稽古仲間であるアメリカ人のデニス=クラークさん(万生館合氣道三段)もご参加くださいました。デニスさんはアメリカで合氣道を始め、砂泊先生のことを知って1999年に来日し、熊本の万生館合氣道本部道場に入門、その後お仕事の都合で関東にいらしていた時期があり、自分とはその頃に一緒に稽古をした間柄でした。

現在は熊本で出会った奥様と共にアメリカ西部のカルフォルニア州で生活しており、道場には所属していませんが、しばしば来日して熊本の真生会本部道場の稽古にも参加しているとのことです。今回はお仕事で来日中ということでした。自分が会うのは10年以上ぶりで、ご連絡をいただいた時は大変驚いたし嬉しかったです。儒学の祖でおよそ2500年前を生きた孔子の言葉の中に、「朋(とも)あり、遠方より来たる、また楽しからずや」(友人がわざわざ遠方より訪ねてきてくれる、なんと嬉しいことだろうか)というものがありますが、正にそういった気持ちでした。つくづく、人の気持ちに今も昔もないなと思います。細々とながらも合氣道を続けていたおかげでこうしたこともあるのでありがたいです。

なおデニスさんとあゆみ指導員は、万生館合氣道、そして合氣道真生会の活動を通してお互いのことは知っており、ネット上での交流はあったそうですが、実際に会うのはこれが初めてとうこでした。実はデニスさんの来訪はあゆみ指導員には隠していて、懇親会の途中でデニスさんが現れた時のあゆみ指導員の驚きようと喜びようは、並々のものではありませんでした。。

懇親会ではそれぞれの近況や、日本、カナダ、アメリカの物価などから、合氣道がどうあるべきかといったやや踏み込んだことまで様々なお話をしました。ちなみにあゆみ指導員は元々日本人、デニスさんは日本語ペラペラなので、日本語だけで何も困らず国際交流させていただきました...(笑)。2時間ほどの短い時間でしたが、とても楽しく、有意義な時間でした。後日、デニスさんからは今度は稽古にも参加したいとメールをいただきました。そのような機会があったらとても嬉しく思います。10年近くに渡って砂泊先生、濱田師範長の元で稽古し、アメリカで生活する今現在も熱心に研究を続けているデニスさんには、教わることがたくさんあると思います。

あゆみ指導員、デニスさん、川崎高津道場の皆さん、本当にありがとうございました。これからも宜しくお願い致します。

川崎高津道場 吉見新

~ 追記 ~

なお、この日は日本武道館で年に一度の古武道演武大会が開催されており、今回はまだ実際には見たことのない流派も参加するということでぜひ見に行きたかったのですが、朝早くに出かけ、数十流派の演武の一挙一動を見逃さないよう何時間も目を凝らして観察し、またバタバタと高津に移動し、食事も取らずにボロボロのコンディションで稽古に臨むのはせっかく遠方からいらしたお客様に申し訳ないと思い、悩み抜いた末に断念し、稽古までは体力温存を最優先とすることにしました。内心では当日の昼頃まで未練タラタラでしたが...。また来年以降に期待したいと思います。

片手取り四方投げはこうやります、とか、突きの小手返しはこうやります、と、形だけを行う稽古ならば、多少疲れていようが体調が悪かろうがなんとかなるでしょうが、自分たちの呼吸力は極めて繊細な感覚を要する理法ですから、少しの不調が相手には大きな違和感として伝わってしまいます。もちろん、本来はどんなコンディションでもできなければ意味がないのですが、可能ならばよい状態であるに越したことはないでしょう。まあ、常日頃からコンディショニングを心掛けることも、武道を修業する者の大事な心得ですよね。

過去の古武道演武大会の様子

~ おわり ~


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