合氣道真生会川崎高津道場 活動報告

2022.03.08

合気道の心、陶芸の心 ~高津出身の人間国宝

毎週土曜夜にテレビ東京で放送されている「美の巨人たち」という番組があります。毎回、ある芸術家や美術作品を取り上げて紹介している番組で、先日3月5日(土)は自分たちが稽古している川崎市高津区(神奈川県)で生まれ育った陶芸家で日本国宝の濱田庄司さん(1894-1978)がテーマでした。

濱田庄司さんは1894年(明治27)に自分がいつも稽古の際に乗り降りしている「溝の口駅」のすぐ近くで生まれ、少年時代を高津区内で過ごしました。そして青年時代に陶芸を学び、イギリスで活動した後、栃木県の益子に移って作陶と日常の道具に美を見出す民藝運動の活動を続け、1955年(昭和30)に日本初の「人間国宝」の一人となりました。お墓は少年時代を過ごした高津にあります。

< 溝の口駅の近くの生誕地跡 >

< 少年時代の住居跡 今はケーキ屋さん >

< 作品や遺品 (大山街道ふるさと館) >

自分は陶芸には全く造詣ばないのですが(いや興味はあるんですよ、でもセンスと知識は全くないんです…)、もしかしたらテレビで高津のことが紹介される場面があるかも…と思い楽しみにして見ていました。結果としては、高津のことは全く触れられず、ちょっと残念…(-_-)。しかし、番組の終わりに紹介された濱田庄司さんの言葉に「あっ」と思いました。

それは、「今の願いは 私の仕事が作ったものというより 少しでも多く 生まれたものと呼ばれるようなものに なってほしいと思う」というものでした。

「これは、本来の合氣道に通じる思いではないか」と感じたのです。

一般の合氣道を稽古している方々は、よく「合氣道の技はこれだ」とか「技をかける」といったことを言いますが、開祖は合氣道の技は「生み出すもの」「生まれるものだ」ということを度々語っておられます。例えば、「魂魄和合して一つになる所に、給われた生きた業(わざ)が生まれてくる。」「自然の力、仕組みを念頭において、之に合する所の自然の武を生み出すのが武産(たけむす)なり。」「武は常に変化を以て生命とする。恒に新しきを生み出すのが武産なり」といった言葉です。

本当の合氣道の技は、無理やり一方的に決まった形を相手に押し付けるようなものではなく、相手と自分、その時の状況に応じて自由自在に千変万化するものなのです。その技の源となるのが「和合の精神による結び」なのです。

きっと、陶芸もそれに通じるものがあるのでしょう。土、水、火、人の手、その時の気候…様々な条件によって陶芸作品は一つ一つみな違い、同じものは決して作ることができないそうです。「こういった器が欲しい」「こういった器があると便利かも」「こんな器があったらおもしろい」…人の様々な思いと工夫、自然の働きが結ばれてその度ごとに全く違う一つ一つの陶芸作品が生まれるのです。

一般的な合氣道の稽古では、「相手がこう来たらこうする」という決まった形を練習することがほとんどです。相手の決まった動きに対し、決まった形、決まった動き、決まったタイミングで「技をかける」ことを繰り返し練習して体に覚えさせるのです。相手も決まった形で動き、受け身を取ることを求められます。


しかし、自分が稽古の際に気を付けていることは、形を決めつけず、その時、その時で自然で最適な技ができるようにするということです。

例えば同じ「片手取り」であっても、人によって取り方は違うし、同じ人でも場合によって感覚が違います。それを、いつでも誰にでも同じようにやるということは、無理やり自分の形に相手をはめ込もうとすることであって、自然の理、和合の精神からはかけ離れたことです。それに相手が想定外のことをしたらそれに対応することができません。それを、相手のやり方が悪いことにして「違う!、合氣道ではこうやるんだ!」と形を押しつけていたら、武道としての発展はありません。むしろ劣化していく一方でしょう。

決まった形があって、「1、2、3」で稽古ができるなら、それはわかりやすくて簡単なものでしょう。しかし本来の合氣道はもっと自由で無限の可能性を持った武道です。自分はそういう合氣道を稽古していきたいと思っています。


形の定まらないものを追い求めるという稽古はなかなか大変なことだとは思います。しかし、ただ決まった形を覚えるだけより、新しいものを創造していくということはきっと楽しいことだと思います。道場の皆さんにもぜひつきあっていただけたらありがたいなーと思っています。

どうか宜しくお願いします。

合氣道真生会川崎高津道場 吉見新


< 濱田庄司さんの作品 >

柄杓で釉薬をバシャっとかけた自由な模様が特徴です

大山街道ふるさと館 : 隣が濱田庄司さんの旧居跡

古い絵図や生活道具も展示されています

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