合氣道真生会川崎高津道場 活動報告

2024.02.10

カナダからのお客様part4 ※2/15加筆修正

2024年1月28日(日)と2月4日(日)の稽古に、カナダのトロントにある合氣道修行道場のあゆみさんがご参加くださいました。

あゆみさんはカナダ在住で、合氣道歴20年ほどのベテラン有段者・指導員であり、合氣道修行道場(合気会所属)の道場長であるガブリエル=ディマルコ先生の奥様です。

合氣道修行道場(カナダ)HP→https://shugyo.com/

お二人はご生前の先師、濱田耀正先生にも度々ご指導を受けており、あゆみさんご自身は数年前から正式に合氣道真生会の門人となり、週に数回、ガブリエル先生や合気会所属の道場仲間たちと真生会式の稽古をしているそうです。あゆみさんの川崎高津道場へのご来訪はこれで4回目で、いつも限られた帰国期間の大切なお時間を割いて自分(吉見)のような下級門人が諸業務を担当する小さく目立たない日陰の雑草のような道場にご足労をいただき大変ありがたく思います。実を言うと、あまりに申し訳ないので事前にはお断りさせていただくことも考えたのですが、自分にとっても川崎高津道場の仲間たちにとっても一緒に稽古させていただくことはとても貴重な機会ですし、お会いして色々お話も伺いたかったので、いらしていただくことにしてしまいました…。身勝手ですみません。

他の道場の指導員の方に自分のような端下者がご指導できることなどは何もありませんが真生会の基本的な稽古の流れを確認したいというあゆみさんのご要望もあり、両日とも礼拝、体操、体(たい)さばき・・・と順々に少し時間をかけて丁寧に進めていきました。体さばきでは、「体さばきは腰のさばき」という先師の教えにならい、足で動くのではなく腰の中心の回転で体全体を動かす感覚を確認しました。腰でさばけば脚力は必要ありませんし、いちいち左右の足に体重を載せないので予備動作なしに速く動くことができます。また体全体を同時に転回させられるので、例えば剣の切り落としに対し、足などが残って切られてしまう危険性が低くなります。

体さばきの一環として、真生会の特徴の一つである剣杖を用いた武器対武器の稽古も少し行い、併せて剣杖の基本的な操法も練習しました。剣杖はカナダの道場でもよく稽古しているそうですが、合気会と真生会では操法などに少なからず違いが見られます。合氣道はみな同じようなもの…と思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。一ヶ条(一教)とか小手返し、四方投げなど表面的には似ている技もありますが、真生会には、開祖の直弟子としてその技と心をより正しく、より深く追求しようと60年以上の模索を続けた先師の教えを受け継ぐ独自の技や稽古法が多く、力の用い方、体の動かし方、武道観などにも他の会派とは大きく違う特徴があります。

数年前に、別の武道の体験講習会で一緒になった合気会系の道場で稽古しているという若い男性は、自分(吉見)の動きを見て何か不思議に感じたのか、「中国武術をやっている方ですか?」と問いかけてきました。また、やはり合気会の別の道場で稽古している有段者の女性と話す機会があって、自分たちの剣杖の演武の動画を見てもらったところ、「え、これ合氣道なの?」というのが第一の感想でした、その方が所属していたのは関西の規模の大きな道場ですが、剣杖の技はほとんど稽古しないようでした。

そうした中で、外見からはわかりづらいかもしれませんが最も真生会で特徴的なのが、体の力をほとんど使わずに相手をフワリと不安定な状態にしてしまう独特の感覚の「呼吸力」であり、その呼吸力を用いた自身にも相手にも無理のかからない技であると思います。両日ともに呼吸力の稽古では、「力を抜き」、「触れている一点から相手と一体となって抵抗をなくし」、「重心を浮かして動かす」という感覚を数種の方法で丁寧に研究するようにし、その上で両手取りの形で呼吸力を主体としてシンプルな少ない動きで相手を崩して投げらるような技などをいくつか行いました。

体を大きく動かしたり、手を持ちかえたりといった手間のかかる作業をしなくても、相手と触れ合った形がそのまま自然と技になるのも呼吸力の技の特性であり、シンプルであるからこそ技の発動が瞬間的で相手に抵抗されるスキも生まれません。もちろんそうした技は簡単にできるのものではなく、手順が多く見た目は派手で覚えるのが大変そうな技よりも実際にはずっと難しく、どこまでも稽古と研究を続けていかなければなりません。それは、「合氣とは愛なり」、「天の理法を体に移し、霊肉一体の至上境に至る…」という合氣道の真の理想を追い求める終わることなき長い修業の旅路でもあるのです。

カナダは様々なルーツの人々が集まる国で、日本と大きく違う文化、思想の中で生まれ育ち、体が大きくて力も強く、しかも普段は合気会スタイルの稽古をしている外国の方々を相手に呼吸力の稽古をするのはなかなか難しい面も多いようですが、とにかく力を抜いて本物の呼吸力を探求しようとされているあゆみさんの真摯な姿勢が印象的で、心から敬意を感じました。

両日とも稽古後には高津駅前の居酒屋「はなの舞」で懇親会を行いました。先師のこと、濱田耀正先生のこと、カナダの生活から世界の文化、信仰、古武術の技法や儀礼、合氣道における体の使い方など様々なことをお話させていただき、プチ英語教室も開いていただきました。いつも楽し過ぎてついつい長い時間になってしまいます。以前にはガブリエル先生とお二人で終電に間に合わず、タクシーを使ってだいぶ散在させてしまったこともあったそうです。ほんとー…に申し訳ありません。

ともあれ、とても楽しく、学ぶことがたくさんの稽古と懇親会でした。

これからも共に先師、濱田耀正先生のご指導を受け継いで研鑽していけたら嬉しいです。

あゆみさん、川崎高津道場のみなさん、今回も本当にありがとうございました!

お土産にいただいたチョコレート☆


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ちなみに、2月4日(日)のお昼間は日本武道館で開催された「日本古武道演武大会」を見学しました。この大会はコロナで非開催の時期もありましたが、通常は毎年この時期に開催されており、今回も剣術、槍術、薙刀術、体術、弓術、砲術などなど、30余りの流派が全国から集まっていました。合気会の植芝守央道主も来賓席から観覧されていました。


古武道(古武術)とは江戸時代以前(-1867)に成立し、継承されてきた諸流派の武術の総称であり、剣道、柔道、なぎなた道、弓道などの現代武道はそれらを元として明治時代以降(1868-)に近代的な道徳理念や体育学、スポーツ性を取り入れながら成立・発展して来ました。植芝盛平翁先生も明治後半から昭和にかけていくつもの古武道を修業し、それらの技法・理法を和合の精神に基づいて編み直すことで合氣道を生み出しました。古武道の技や動作の中にはその時代の生活や社会事情を知らないと理解が難しい部分も多く、礼法や演武の装束にも流派ごとの特徴があって、それぞれの流派がたどってきた歴史が感じられ、とても興味深く思いました。

柔道などの現代武道学校教育にも取り入れられ、大規模な大会も開かれて世界中に膨大な数の競技者、愛好者がいますが、古武道には稽古者がごく少ない流派もあり、稽古の継続、次世代への継承にも様々なご苦労があることと思います。関係者の方々の様々な努力のおかげで、数百年前の武術の姿を知ることができ、研究することもできるのですから、とてもありがたいことだと思います。一度途絶えてしまった伝統を取り戻すことは極めて難しく、不可能なこともあります。ぜひ、古武道も大切な日本の伝統文化の一つとして、今後も受け継がれていって欲しいと思います。


合氣道真生会川崎高津道場 吉見新

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